2022年1月号
特集
人生、一誠に帰す
インタビュー①
  • SkyDrive社長福澤知浩

空飛ぶクルマで
社会を変える

大空を自在に飛んで、人々を瞬く間に目的地に送り届けてくれる〝空飛ぶクルマ〟。そんな未来の乗り物が、私たちの前に登場する日が近いという。100年に一度のモビリティ革命に挑む福澤知浩氏に、空飛ぶクルマの可能性を交えて、開発の醍醐味や、この事業に懸ける思いを伺った(写真:「空飛ぶクルマ」の模型を手に)。

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未来の乗り物がもたらす100年に一度の社会変革

——福澤さんの手掛ける「空飛ぶクルマ」をテレビで拝見しました。SFに出てくるような未来の乗り物が、もうすぐ実現しそうだと知って衝撃を受けました。

2020年に、日本で初めて有人の公開飛行に成功しました。既に法定速度や飛行高度、離着陸できる場所の条件なども国などに提案済みで、現在は2025年の大阪・関西万博で、お客さんを会場まで乗せるエアタクシー事業を立ち上げる準備を進めています。

——空飛ぶクルマの主な特徴を教えてください。

電動、自動運転、垂直離着陸というのが基本で、騒音も少なく、環境に優しい乗り物です。
滑走路が必要なく、乗用車2台分くらいのスペースがあれば停められますから、例えば街中のコンビニの駐車場などに、スマホで呼び出すこともできます。障害物のない空を時速100キロで飛びますから、東京-横浜間を約10分で移動することも可能です。

——実現すれば、人の生活が大きく変わりそうですね。

100年前に乗用車の大量生産が始まって以来の、大きなインパクトを社会にもたらす可能性があると思います。
人というのは絶えず進化を重ねていて、それと共に生活も自分たちの目的に沿う形にどんどん変え続けていると思うんです。例えば、昔は水を飲むために何時間もかけて水を汲みに行く必要がありましたけど、いまはその時間をゼロにする生活を実現していますよね。
同様に、いま都心で働いている人は1、2時間かけて通勤していますけど、空飛ぶクルマが登場すれば、移動時間を大幅に短縮できます。しかも、機内はパーソナルな空間ですから、移動中に周囲に気を遣うことなく映画を楽しむこともできる。ドライブに利用すれば、渋滞に巻き込まれることもなく目的地に行けますし、移動の喜びというのは平面を走るよりも、三次元空間を自在に移動するほうが断然大きくなります。
空飛ぶクルマが登場することによって、移動が楽しく、効果的に、効率的になり、それによって移動の時間は減り、会える人は増え、人の生活の質がどんどん上がっていくと思うんです。
それから、従来のように鉄道の路線に制約されない生活が可能になりますから、街づくりも大きく変わってくるでしょうし、交通の便の悪い地方や、離島、山間部の新しい移動手段になります。さらには、災害時の緊急搬送など医療分野での活用も期待できます。

——様々な可能性を秘めているのですね。

ですから、いまは世界中で空飛ぶクルマの開発競争が起こっているんです。ただ、開発に取り組んでいるプロジェクトが約400ある中で、有人飛行に成功した会社は、いまのところ当社を含めてわずか10社くらいしかありません。
そんな当社に可能性を見出してくださって、大阪府、大阪市、そして複数の国内の大手企業様が、冒頭でお話しした万博でのエアタクシー事業の立ち上げ準備に参画してくださっているんです。
政府も国の成長戦略事業の一つに空飛ぶクルマの事業を掲げています。官民が協力して作成したロードマップでは、2023年を目標に事業をスタートさせ、2030年からは実用化をさらに拡大させていくことになっています。

SkyDrive社長

福澤知浩

ふくざわ・ともひろ

昭和62年東京都生まれ。平成22年東京大学工学部精密工学科卒業。トヨタ自動車入社。26年有志団体CARTIVTORに参画。共同代表に就任し、空飛ぶクルマの開発を始める。29年独立。経営コンサルティング活動を経て、30年SkyDrive設立。代表取締役CEOに就任。