2026年4月号
特集
感謝にまさる
能力なし
インタビュー③
  • ピアニスト竿下和美

自分の人生は
自分で輝かせる

ピアニストとして20代から受賞を重ね、独自の演奏活動を通じて地域貢献の表彰も受けてきた竿下和美さん。一人娘の高校卒業を控えた春、ステージⅣのがんで余命1年半の宣告を受ける。しかし、病を抱えて病の内に屈せず、芸術家としての火種に転じるその姿は、周囲に感動と勇気を与えている。竿下さんが音に込める思いとは。

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    ピアニスト

    竿下和美

    さおした・かずみ

    大阪府生まれ。京都市立芸術大学音楽学部卒業後、プロデビュー。平成11年長江杯国際ピアノコンクール第1位、16年フランス音楽コンクール奨励賞ほか受賞多数。令和元年NPO法人京田辺音楽家協会設立。5年2月、ステージⅣの肺腺がんと余命1年半の宣告を受ける。6年12月「『全』市民第九演奏会 ~三世代で繋ぐ歓喜の歌~」を決行、以降も活動継続中。

    がんを抱えて、3つの自分を生きる

    ──まさにいま、末期がんを抱えながら活躍するピアニストがいると知り、きょうなべ市にまいりました。

    遅い時間にありがとうございます。この春先の時期は自分の活動に加えて、音楽大学志望の高校生の指導が佳境に入るので、夜8時まで体が空かなくて。
    いまの感覚として、私の中には3人の自分がいるんです。自分の音楽を追究するピアニスト竿下和美。次に、周りの音楽仲間の夢を叶える京田辺音楽家協会の理事長としての私。そして、皆さんにつけていただいた屋号「がんと闘うピアニスト」としてボランティア活動を行う私です。
    朝、家事を済ませると、この1年毎日SNS(Instagram)で続けている演奏の配信の撮影をして、午後はコンサートや協会の仕事、学生の指導をする。抗がん剤の投与は、毎週1回行っています。

    ──お会いすると、見るからにお元気で、驚いています。

    よく言われます(笑)。抗がん剤は、一番効くものから順に打っていって、4年目のいま4種類目です。体調は比較的安定していますけど、5年を越えるのが大変と言われている中で、この薬の効果がどれだけもつか。それは誰にも分からないことです。
    もちろん病気になったのは嫌な出来事です。でも逆に、病気によって常に終わりを意識するようになりました。やりたいことは何でも後回しせず、前倒しでやろうって。だから人生に断然ハリが出てきました。人間、本来こうやって生きたら楽しいんだろうなって、日々感じています。