2020年5月号
特集
先達に学ぶ
  • 國學院大學名誉教授、豊島岡女子学園長二木謙一

戦国武将に学ぶ
リーダーシップ

常に生死が隣り合わせだった戦国時代。一つ判断を誤れば、自分だけでなく家臣やその家族、ひいては国までをも破滅させることになるだけに、戦国武将の生き方や遺した言葉には多くの叡智が詰まっている。中世・戦国時代史研究の第一人者である二木謙一氏は、戦国武将のリーダーシップや組織運営を基に豊島岡女子学園の経営改革に当たり、見事日本屈指の女子進学校へと急成長させた。その成功の要諦とは何か、激動の戦国時代を紐解きながら語っていただく。

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歴史の学びが学校経営の支えに

自ら〝歴史人間〟と称するほど歴史好きな私が、歴史に魅せられたのは子供の頃。自宅で父の書棚にあった伝記や時代小説を読んで歴史に興味を持つようになったことがきっかけでした。その後、大学生となり、歴史の専門的な勉強をしているうちに、それが本職となり、國學院大學史学科の教壇に立つようになったのでした。

2003年、62歳の時からは、中高の教員経験がなかったにもかかわらず、父親の後を継いで私立豊島岡としまがおか女子学園の校長を務めることになりました。その際、組織再編や人材登用などの判断のり所になったのが、歴史上の偉人の生き方でした。特に戦国武将たちのリーダーシップ、マネジメント力には学ぶことが多く、それらを実践するうちに、校長就任当時は10名前後だった東大合格者数が13年後には41名と大きく伸ばすことができたのです。これは女子御三家筆頭の桜蔭おういん学園に次いで女子校の中で2位の実績です。

改革の根底にあった歴史からの学びとは何か、またいかにそれらを実践したのか。戦国武将たちの生き方を辿たどりながら、現代を生きる私たちが歴史を学ぶ意義についてお伝えしたいと思います。

國學院大學名誉教授、豊島岡女子学園長

二木謙一

ふたき・けんいち

昭和15年東京生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。専門は有職故実・日本中世史。國學院大學教授・文学部長、豊島岡女子学園中学高等学校校長・理事長を歴任。60年『中世武家儀礼の研究』(吉川弘文館)でサントリー学芸賞を受賞。NHK大河ドラマの風俗・時代考証は平成6年の「花の乱」から26年の「軍師官兵衛」まで14作品を担当。