2026年5月号
特集
人を育てる
対談
  • 日世会長岡山 宏
  • ツムラ社長加藤照和

組織を伸ばす
経営のあり方

日本で初めてソフトクリームのビジネスを立ち上げた日世と、漢方薬のパイオニアとして知られるツムラ。共に国内で圧倒的なシェアを獲得し、既に確固たる地歩を築いた両社に、それぞれ新たな成長の道筋をつけてきたのが岡山宏氏と加藤照和氏である。世代を超えてお互いを尊敬し合うお二人の原点、そして各々が事業に懸ける思い。

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    日世会長

    岡山 宏

    おかやま・ひろし

    昭和21年和歌山県生まれ。44年関西学院大学法学部卒業後、日世入社。常務取締役、専務取締役、海外事業部管掌などを経て、平成27年代表取締役社長。令和4年代表取締役会長。

    ツムラ社長

    加藤照和

    かとう・てるかず

    昭和38年愛知県生まれ。61年中央大学商学部卒業後、津村順天堂(現・ツムラ)入社。米国法人社長、コーポレート・コミュニケーション室長などを経て、平成24年代表取締役社長に就任。

    お互いの人柄に魅了されて

    加藤 きょうは念願の岡山会長との対談が実現して、とても嬉しく思います。『致知』の編集部から対談の打診をいただいた時に、お相手はぜひ岡山会長でお願いしたいとお伝えしていたんです。

    岡山 ありがとうございます。しかし何分こういう対談は初めてなものですから、ご迷惑にならなければよろしいのですが(笑)。

    加藤 とんでもございません。岡山会長のことは、御社の中国事業の責任者の方を通じてもう10年以上も前から伺っておりまして、3年前にようやく会食の機会を賜った時からお人柄にすっかり魅了されております。経営においても人生においても大先輩の岡山会長のお話を、きょうはじっくり伺いたく思います。

    岡山 その3年前の加藤社長との会食の前に、御社のことを少しだけ勉強させていただいたんですよ。すると、当時で創業130年、売上高約1,500億円、営業利益約200億円のすごい会社だった。加藤さんは、そういう伝統ある一流会社を、48歳で社長に就任されて10年以上も背負ってこられたのに、そのご苦労をじんも感じさせない。それが最初にお目にかかった時の加藤社長の第一印象でした。
    そうしていろいろお話を伺っていると、おやりになっていること、お考えになっていることにすごく一貫性を感じました。せんえつながら、そういうブレないところが、加藤社長がいろんな方から信頼される一番大きな要素かなと感じます。

    加藤 過分なお言葉をいただいて恐縮です。岡山会長は大変パワフルで情熱あふれるお人柄でいらっしゃいますが、一方で17歳も若輩の私にいつも細やかなお心遣いをしていただいて、本当にありがたく思っています。

    親しく交友を重ねてきた岡山氏(右から2人目)と加藤氏(左端)

    ソフトクリームで6割のシェアを実現

    加藤 岡山会長が率いてこられた御社は、ソフトクリームのトップカンパニーとして国内では6割ものシェアを占めておられるそうですね。商業施設や観光地など、至る所で御社のソフトクリームが提供されているのを拝見しています。

    岡山 私どもは、1947年にソフトクリームのコーンをアメリカから輸入してスタートした会社なんです。それが輸入では間に合わなくなって、自前でコーンを製造する工場をつくり、クリームの原料を冷蔵してしぼり出すフリーザーという機械を開発し、さらに原料となるミックス、果物の果肉や果汁を加えたフルーツプレパレーションの開発という歴史を踏んできました。ソフトクリームに必要なものを一括して製造・販売して、日世にっせいに頼めばソフトクリームに関わるものが全部そろうわけです。

    加藤 そこが御社の大きな強みですよね。

    岡山 それから、フリーザーは納品後もメンテナンスが必要ですし、ソフトクリームは乳製品ですから衛生面で留意しないといけませんが、そういうところもすべてカバーしています。ですから、仮に衛生問題が起こっても、私どもが保健所と一緒にバックアップさせていただくことで、お客様との信頼関係がさらに深まるわけです。
    さらに、代理店さんとの非常に強いネットワークを全国に持っていることも当社の強みです。
    当社はコーンの製造を始めた約70年前から、1県に1社を原則に47都道府県で代理店さんをつくって、代理店さんと共に大きくなってきました。その代理店さんが地方で大きな力を発揮してくださっていて、何かイベントをやろうという時なども、地元で一所懸命ロケーションを確保してくれますので、スムーズに展開することができるんです。

    加藤 近年は海外事業に力を注いでおられますね。

    岡山 いまの売上高は連結で約650億円ですが、そのうち国内が約500億円、海外が約150億円を占めています。
    ご承知のように、国内は人口減少で人手不足が非常に深刻化していましてね。特に、24時間稼働のコーン製造工場はなかなか人が集まらないものですから、AIやロボットを導入して、できるだけ少ない人員で運営していくことを最優先事項として取り組んでいます。
    海外は主に中国、それから台湾、香港、タイ、ベトナムを中心に展開しています。
    中国は、投資マインドが冷え込み、デフレに陥っていて、ちょうど日本の1990年代のような状況です。我々にとって非常に深刻なのは、お客様がお店で食べずに家で食べるようになったことです。中国の売り上げの約90%を占めているお取引先では、デリバリーのウエイトが55%で、お店に来る方が半分以下になっているんです。我々のソフトクリームは運べないので、店舗数は倍に増えたのに売り上げが伸びないという問題を抱えているんです。
    もう一つ、ものすごい値下げ競争にもさらされていましてね。最近営業を始めたある会社は、自社で飲料とソフトクリームを製造してFCに卸すシステムで、わずか3年で国内に4万5,000店、ベトナムにも1,500店つくって上場を果たしました。そこのソフトクリームの値段は3元、日本円で60円と、当社の半額以下なんです。

    加藤 御社はどのように対処なさっているのですか。

    岡山 価格で競ったら立ち行きませんから、安売りはせずに何とかシェアだけは守ろうと。そうして、いずれ景気が上向く時に打って出られる体制を整えているんです。
    ただ、そうは言っても当面の売り上げを伸ばしていかなければなりませんので、うちはもう少し高級な商品で勝負していこうと考えて、現地の方に出資して新会社を設立しました。この3月からテスト店舗を数百店出店して、年内に3,000店、5年で5万店を出店する予定です。中国の方ってビジネスモデルをつくるのがものすごく早いし、商売に積極的でスケールも実に大きいことを実感させられました。
    中国は政策転換が唐突で市場が回復する時も急ですから、何とかここを耐えて回復期に羽ばたこうと考えているところです。