2026年2月号
特集
先達に学ぶ
わが人生の先達③
  • 随筆家石川真理子

下田歌子 
修身の心得

「女性が社会を変える、世界を変える」。この信念の下、実践女子学園を創立した日本の女子教育の先駆者・下田歌子。総理大臣の器と称賛された女傑は、いかにして女性教育の道なき道を切り開いたのか。歌子の歩みや教えについて、武士道研究家としても知られる石川真理子さんに語っていただいた。【写真=©国立国会図書館「近代日本人の肖像」】

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    随筆家

    石川真理子

    いしかわ・まりこ

    東京都生まれ。武家の家系に生まれ、明治生まれの祖母から武家に伝わる薫陶を受ける。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業後、大手出版社の編集プロダクション勤務。独立後は文筆活動の傍ら武士道や武家の生活文化を独自に学び、忘れられた「婦道」についての啓蒙活動を行う。著書に『女子の品格』(致知出版社)『乙女の心得』(グッドブックス)など多数。【写真=©2025 魚住心】

    明治の元勲に「総理大臣の器」と言わしめた女傑

    日本の女子教育の先駆者と聞いて誰を思い浮かべるでしょうか。

    例えば、日本初の女子留学生の一人である津田梅子はよく知られています。しかし、近代日本の女子教育のいしずえを築いたもっと語るべき女傑がいることを、声を大にして訴えたいと思います。それが、実践女学校(現・実践女子学園)創設者の下田歌子です。

    歌子は女性の結束と地位向上を目的として数々の学校設立・運営に携わり、女生徒の体育教育や通信教育など、現代では当たり前となった教育を日本でいち早く導入。その一方で、女性の修身教育について数多あまたの著作を手掛け、生涯にわたって日本女性のあり方を提唱し続けました。伊藤博文や元田ながざねといった名だたる明治の元勲をして、「男であれば総理大臣の器」と言わしめた存在です。

    私が歌子に巡り合ったのは10年以上前、武家出身の幕末明治の日本女性について調べていた時でした。私淑ししゅくする佐藤一斎いっさいと同じ岩村藩出身ということで関心を抱き、著作を読み進めたところ、まるで歌子が現代に必要なことを語りかけているように感じました。歌子が残した膨大な著作と向き合うほど、たくましい生き方と教えの一つひとつに魅せられていったのです。

    「日本固有の武士道精神を基礎として、これに倫理学上の知識を加え、時勢に応じて、いきいきとしたる力のあるところの女徳を養って、そして、女子の品性を高めたいものであります」

    日本の精神である武士道を基本とし、必要に応じて時代性や他国の優れた文化や教育を取り入れる。日本人としての自覚を持つことが第一義であると説く歌子の教えは、私の考えと通ずるものがあり、深い意味を持って響いてきました。