2023年2月号
特集
積善せきぜんいえ余慶よけいあり
一人称
  • そうじの力社長、組織変革プロデューサー小早祥一郎

そうじの力で運命を開く

そうじを通じて企業組織を強くする。この信念のもと、累計500社を超える企業を支援してきた小早祥一郎氏。かつては職場に馴染めず、道を見出しかねていた小早氏を変えたそうじとの出合い、そして支援先に次々と変革をもたらしてきたそうじの力についてお話しいただいた。

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本質を明らかにし究める

「君は理念がないからブレるんだ」

尊敬する師匠からそう指摘されたのは、いまから約20年前。脱サラしたものの、本当に進むべき道を見出しかね、自分の浅はかさに舌をんでいた折のことでした。

理念とは、言葉を変えていえば究極の目的。企業に理念があるように、私たち一人ひとりにも理念があってしかるべきだというのがその師匠の教えでした。では、私の人生の究極目的は何だろう? この一度きりの人生を、私は何のために生きるべきか?

勉強を重ね、自問自答を繰り返す中で見出したのが、「和の社会をつくる」という理念でした。エゴをき出しにして競争を繰り返すいまの社会に一石を投じ、日本人が本来持つ和の心に基づいて、お互いに助け合い、心豊かに暮らしていける社会の実現に貢献していきたいと決意したのです。

この理念の下に私がいま行っているのが、そうじを通じて企業組織を強くするお手伝いです。

具体的には、委託先の企業様を定期的に訪問し、現場巡回指導、レクチャー、実習、ミーティングなどを通じ、職場に整理・整頓せいとん・清掃が定着するよう、意識面と仕組み・技術面の両面から助言を行い、組織改革につながる「気づき」や「実感」の機会を提供しています。

汚れたトイレを見た時には、その場で便器に手を突っ込み、こびりついた汚れを磨き落としてお見せすることもあります。初めて見る方はビックリされますが、「確かにうちの会社は汚れている」「このままではいけない」と実感され、自らも実践することでこの活動の意義を理解されるのです。

2007年頃から活動を始め、これまでに支援した企業様の数は累計500社超。売り上げや利益が拡大した、不良品が減った、社員の定着率がアップした、不良在庫がなくなった等々、たくさんの喜びの声をいただいています。

そうじを実践することによって、なぜ企業にこうしたよい変化が起こるのでしょうか。

『致知』でもお馴染なじみの教育者・森信三先生に、再建の三大原理という教えがあります。時を守り、場を清め、礼を正す。こうした基本をおろそかにして、決して会社を伸ばすことはできないのです。

人は周囲の環境に適応して生きています。会社の中にものが散乱し、あちこちにほこりが溜まっているような状態で、社員様に規律正しい行動を求めても無理な話です。

しかし、そうじを実践して身の回りの環境に物理的に働きかけると、人の意識が変わります。必要最小限のものが、使いやすい場所に置かれ、どこに何があるのか一目瞭然。ちり一つない状態になれば、社員の間に「約束を守ろう」「人が見ていなくても手を抜かないようにしよう」「ものを大事に使おう」「お互いに気を遣おう」という意識がじょうせいされていきます。そして、こうしたよい環境を他の誰かにしてもらうのではなく、自ら行動してつくっていくことが、意識の改革に繋がっていくのです。

支援先の巡回指導では、工場、倉庫、作業場など、外からは目に留まりにくいバックヤードも順次見て回り、「ここはこうしましょう」と、気になる箇所を随時指摘させていただきます。見えない所に手を入れることで、その組織が潜在的に抱えている本当の問題があぶり出され、改革の糸口が見えてくるからです。支援先の中には、長年倉庫に山積みになっていた不良在庫がゼロになり、利益率が大幅に向上した企業様もあります。

私はこの活動に際して、漢字の「掃除」ではなく、あえて平仮名表記の「そうじ」を用いて、一般的な掃除よりも広く、深い意味を持たせています。それは、単に掃いたり、いたりして、場を綺麗きれいにすることだけに止まらず、その奥にある本当の問題を導き出すことを目指しているからです。本質を明らかにし、きわめるお手伝いをすることこそが、私の支援活動の真の目的なのです。

そうじの力社長、組織変革プロデューサー

小早祥一郎

こはや・しょういちろう

昭和43年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、日産自動車㈱に入社。制度改革のプロジェクトリーダー等を歴任。平成21年㈱そうじの力を設立。累計500社以上の支援先で組織変革に貢献。全国で現場指導や研修、講演活動を展開。著書に『〝そうじ〟をすると、なぜ会社がよくなるのか』(セルバ出版)『8割を捨てて2割に集中する捨てる経営』(スタンダーズ)がある。